HopiHopi日記

読書日記(書評 ブックレビュー 読書感想文)に雑記少々。本を読んで、いろいろ考えます。

隣の芝生は青く見える-仕事と幸せと香川選手の移籍の話ー

 この一週間やたらと仕事が忙しく、読書エントリを書く気分ではないので、今回はお仕事について考えてみました(まぁ、それでも3冊は読めたのですが、文章が書けるまで整理できておらず)。
 

今日のニュースを見ると、サッカー選手の香川真司さんが大活躍みたいですね。僕はサッカーに詳しくないので詳細は分からないのですが、以前所属していたマンチェスター・ユナイテッド(以下、マンU)とは別人のようで、水を得た魚のように生き生きしているとのことです。

 
僕が読んだ数紙の記事から判断する限り、香川選手はマンUで不遇を囲っていたようです。監督の求める戦術やシステムと、香川選手の能力や適性が合わなかったとのこと。今期に入り戦力外通告を出されたのを契機に、以前所属していたドルトムント(以下、ドルト)に移籍し大歓迎で迎えられたのはご存知の方も多いでしょう。
 
この香川選手の状況を会社員に置き換えると、こんな感じでしょうか。

誰もが羨む一流企業(マンU)に引き抜かれたエリートサラリーマン・K氏は、上司(マンUファン・ハール監督)から冷遇されて以前のように活躍することができないでいた。自分の得意な仕事(トップ下)はさせてもらえず、他の業務(不慣れなボランチサイドハーフ)を任されるも、思うように結果が残せない。悶々とした日々を過ごすも意を決して退職し、以前勤めていた中堅どころの企業(ドルト)に出戻りした。心機一転働き始めると、かつての上司や同僚はもとより得意先(ドルト・ファン)から暖かく迎え入れられ、K氏は望んでいた仕事(トップ下)まで任されることになった。彼は望みどおりの職場環境を手にし、以前の輝きを取り戻し始めたのである。

 
これって何だか、僕たちにも当てはまりそうな教訓ではないでしょうか。ぱっとしない会社だけどさしたる不満もなく平凡で平和な毎日を送っていたのに、より高い給料や名声などを求めて転職する。でも、足を引っ張り合う同僚だらけでギスギスした職場、上司は好き嫌いが激しい独裁者など、一部上場の誰でも知ってる有名企業なのに以前のように楽しく働くことができない。どこで間違えたのだろう。でも、(香川選手のように)今更後戻りはできないし、今の会社より給料が良くて見栄えのする会社なんてないよ。
 
こんな目にあっている方が、実は多くいらっしゃるのではないでしょうか。特に最近は不況が好転する見込みも無く、給料の切り下げや休日出勤・サービス残業の横行など職場環境が悪化していると聞きます。給料UPや労働条件改善を目指して転職したはずなのに、以前より劣悪な環境で働くことになってしまった。今考えると、前いた会社はそんなに悪くなかったな、と。
 
それに新しい職場では、一から信頼や実績を作らなければなりません。今までは、これまで築いてきたネットワークが、こっそりあなたのことを助けてくれたり、好意的に物事を解釈してくれていました(勿論、逆もありますが)。しかし、新しい職場では、そういった目に見えない資産を一から築く必要があります。今までよりも丁寧に気を使って仕事をしないと以前と同じだけの成果は得られないのではないでしょうか 。時間もかかります。
 
今まで自分が成し遂げてきたこと、自分が手に入れたもの。改めて考えてみると、当たり前すぎてその価値を低く見積もっている物事は、結構たくさんありそうな気がします。特に仕事という自分だけでは完結しないフィールドでそこそこ快適に毎日を過ごすことができているのは、自分が関わる人から尊重され頼りにされているおかげかもしれません。普段は目に見えないけど、周りの人の暖かな気持ちやサポートに支えられて、トラブルを知らぬ間に回避して平和に暮らすことができていると考えることもできます。もしかしたら、内田樹さんの言う「アンサング・ヒーロー(unsung hero)」があなたの周りにいるのかもしれません(『街場の憂国』のあとがきより)。
 
こうした日常の「当たり前」を再認識し、感謝することが実は幸せな人生を送るコツなのかも知れないなと、思いました。香川選手はドルトに戻ることができましたが、我々のような普通の会社員は前の方が良かったなんて言っても、後の祭りです。前だけでなく、自分の足元や周りを一度見回してみる必要がありそうです。
 
なんだか仏教や禅問答のようですが、自分が他者から求められている今の「場所」こそが最良の「場所」であり、ガツガツと前や上を目指すことだけが全てではない。上昇志向によって失うものもあるのではないか、ということを考えさせられた香川選手のニュースでした。
街場の憂国論 (犀の教室)

街場の憂国論 (犀の教室)

 
置かれた場所で咲きなさい

置かれた場所で咲きなさい

 

※すいません。『置かれた場所で咲きなさい』は、ちゃんと読んだこと無い本なのですが、なんとなくこのエントリを書いていて思いついたので紹介してしまいました。